かっこいいもの
かっこいいもの。
毎朝決まった時刻に雨戸を開ける主婦。真冬でも所作が揺らがず、戸の数だけ淡々と音を鳴らすのがかっこいい。雨戸を毎日閉めている、という事実からして良い。
農作業をする人は無条件にかっこいい。絶対に腰をおかしくする姿勢を続け、絶対に腰をおかしくしている。そこに使命感のようなものを感じる。担当の作物に詳しいだけでなく、気候や鳥や虫に精通している。集合住宅の大家であることも多く、住民に平気な顔で結構な量の野菜を譲ったりする。まさに天地人を司っている。
館内トイレの清掃をする女性。日々、常軌を逸した分量の汚物をあるべき場所に移す。本能的な反応では視界に入れることすら忌避するであろうところ、高い理性でそれを制御しているのが凄い。大量のうんこが撒き散らされた個室に当たっても、業務用の携帯を取り出し、遅くなりますとだけ伝えて切り、淡々と作業を開始するところなど畏怖の念を覚える。