この世の未練になりそうなもの
死に際に、この世の未練となりそうなのは、楽しかった日やセンセーショナルな出来事ではなく、以下のようなものではないかと思う。
マウスについた手垢
常備薬の入ってる引き出し
キーボードのキーの隙間にティッシュを通すときの音
雲梯の下で群れる女子
唐突に自転車を降りるおばさん
心置きなく立ち読みできる劣化した雑誌
マックフライポテトのラス1
風になびく木のひと際揺れ幅の大きい枝
各RPGにおける龍の扱いの違い
灯油のにおい
岩波文庫の前で起こる便意
煮付けの汁をご飯にかけるぞという思い
専門書のわからなさ
私という一人称の人同士の揉め事
隣りの席の人がメモってるからメモったこと
まっすぐ成人誌を購入して帰った人
旅館で入浴を済ませたあと夕食に向かう感じ
「!」にするか「。」にするかで迷った時間
重機の操縦席に刺さる爽健美茶
小便器の横の角に引っ掛けた傘の危うさ
なんでこういうものに未練を感じるのか。死後の世界があったとしても、こういうものはそこには無さそうだからかもしれない。