無口状態から脱出するコツ

小学校1年生から2年生まで、クラスの中でほぼ一言もしゃべらなかった。国語の本読みでは発声を強いられたけど、声が小さいのを毎回怒られた。教卓の横に立たされて、ひとりだけ結構な量を読まされ、「みんな聞こえた~?」「聞こえません」「聞こえないって」という圧力をかけられた。優しい子たちが話しかけてくれることもあったけど、「しゃべりいや」と言われるほど口を閉ざしてしまったのをよく覚えている。しだいに優しい子も話しかけてくれなくなり、たまにあんまり優しくない子が近寄ってきて目を見て「バーカ」と言ってくるようになった。

2年間もずっとしゃべらないなんて異常なことのようにも思えるけど、最初の数日間でしゃべれないと、それ以降はドミノ倒しのようにしゃべれなくなるので、そう珍しいことじゃないかもしれない。実際、好きでしゃべってなかったわけではなくて、何度かしゃべろうとは試みたものの、「今突然しゃべると俄然注目を浴びるだろうな・・・」ということを言語化できずとも感じてしまい、しゃべらない選択をずるずる続けていたように思う。

なのでこの無口期間はとりあえずクラス替えをきっかけに終わった。クラス替えのタイミングであれば、とくに注目されることなくスムースに声出る人間に鞍替えできたんだと思う。

でも、年齢を増してもときどきこの無口状態が始まることがあった。あまり知り合いのいない校区外の高校に入ったとき、新しい塾に入ったとき、明るい人たち多めの宴会など。ただ、大人になるにつれて、ドミノを早めに止められるようにはなった気がする。コツは「誰かが面白めのことを言ったときに、そいつの視界の端でちょっと笑う」だ。場の注目は基本的にその面白めのことを言ったやつのほうに向かっているので、自分はたとえ初めての発声であっても、そこには言及されずに済むことが多い。本当に面白い発言を待っているとなかなか来ないので、ちょっと面白めのことで妥協するのがコツです。ぜひ。